▼2012-06-14 14:13 Wine & dinner 夏目 リメイク手帳。其の1。 ソムリエの夏目氏が、いよいよ自前の店を持つ。改装のお手伝いをすることになった。 場所は市電の競輪場前停車場の前。かねてより「図面を描いて職人さんにお願いする」デザイナーとしては当然な作業の進め方にジレンマがあり、よい機会だからと、全てハンドメイドすることを前提に、「既存の店舗から、不必要な全てを取り外し、古い家具をリメイクし、全て違う椅子とテーブル。照明は、枝と和紙で手作りし、器具を見せない。外構は駐車場を別にして、林を作り、庭を通って店に入るノ 。」などの、基本プランを立てた。 改装前の状態。 内部から市電通りを見る。今は雑踏が見えるが、完成すれば、店から外を見れば緑だけになるだろう。 そして、一つ一つ買い求めた机と椅子のリメイクが始まった。座を外し、塗装を落とすと、木肌が蘇って、「木」本来の美しさと強さが表れる。 やむなくウレタンやラッカーで塗装され、販売されているが、デザイナー自身が現状の塗装に不満で、塗装を落としての使用に言及している椅子もある。これらの椅子の中には、有名デザイナーのものもある。木地のままの方が、デザイナーの意図がよく分かる。 この後は、椅子には、木製の座を取り付け、机は座面の形と高さを揃えて、着色とオイル仕上げ。それは次回のお楽しみ ▼2012-06-27 17:22 Wine & dinner 夏目 リメイク手帳。其の2。 「Wine & dinner 夏目」の椅子の座の取り付けが始まった。ビニールレザーの座を取り外し、塗装を剥がした椅子に、古材をパッチワークした。取りあえず、昨日は午後からで、5脚が完了。注文したワトコオイルも届いた。 手間はかかるが、図面を書いて、職人さんに制作してもらうのとは、違う面白さがある。その上、こんな作業はそもそも職人さんには頼めない。塗装の仕上がりが楽しみになってきた。 しかし、最近はどうも好んで、このような作業を選ぶ傾向があるのだが、まとまった時間が取れないのが悩みの種である。 今日も大学の講義で作業はできない。と言って、この面白さを人にまかす寛容さは持ち合わせていない。それが不幸? の始まりである。その上、だれかに文句が言いたいのだが、誰も相手をしてくれないのも悩みの種である。 ▼2012-07-09 15:37 Wine & dinner 夏目 リメイク手帳。其の3。 仕事の合間を縫っての作業のため(これも仕事の筈だが。)一向にはかどらないが、やっと、椅子の座作りが終わった。わざわざ、座を古材でパッチワークしているので、想像以上に手がかかる。あとは、サンドペーパーを簡単(?)にかけて、塗装するだけ。 全て椅子のデザインが違う面白さ しかし、元々の既製の椅子の座の高さはおおよそ3種類。国産の椅子は約41cm、6脚。輸入の椅子はそれよりも5cmほど高い、5脚。何故か、その中間の椅子も3脚あった。ベンチ2脚は、ハ輸入の椅子の高さ。全て、国産の椅子の高さに揃えた。ハ 私は腰が悪いため、作業に合わせてもっとも楽な椅子の高さを常に調節する。椅子の座の高さの5cmの違いは決定的だと思うのだが。 これまで、既製品の家具を使うことは殆どなかったためそれほど意識していなかったが、日本人は座の高い椅子を我慢して使ってきたのだろう。体格の違う女性には相当無理を強いてきたのではなかろうか。デザイナーや、輸入担当者に男性が多いせいなのか。 それとも、格好いいことは我慢することと、我々は自らの意識を閉ざし、あきらめてきたのかも知れない。それとも、椅子の座の高さの重要性それすら気が付いていない人が多いのか。 ▼2012-10-10 18:58 夏目 リメイク手帳。其の4。 美術にかまけて、しばらく休んでいた夏目のリメイク手帳もいよいよ、終盤にさしかかってきた。ところで、不思議不思議、Wine & dinner 夏目から夏目に店名が変更になっている。何人が気づいたかなノ 壁の塗装、棚の取り付け、照明の制作・配線・取り付けと今週、一気に作業は進行。いよいよ、完成間近。 あとは、店名も決まったし、看板を造れば、ほぼ私の作業は終了。 デザイナーのエゴが剥き出しになったデザイン、美しさのかけらもないデザインが街に横行している。見るからに、無駄なデザインが溢れている。その結果、不必要な施工費が費やされることになる。 職人に頼めば、許せない仕上げも自ら、手がければ、それで十分だ。必要以上の精度を求めてはいないか。自ら、手がければ、それも見えてくる。 改装すれば十分に再利用できるのに、自らの欲求を満たすため新築を安易に選択できた時代はもう終わりにしよう。 荒さの度合いの判断や、曖昧な指示は職人さんにお願いする場合は絶対にできない。いきおい、図面に書けること、マニュアル化されたものしか造れない。どうしても、それを望むのなら、現場に付きっきりにならなければならない。すると、人件費は倍になり施主には理不尽な経費が発生する。ジレンマも倍増する。自ら、手がければ、それも解決できる。 カタログの家具や照明のなかから選ぶ営業マンのようなデザイナーはもういらない。カタログに乗っていることを知っているだけで、センスがあるふりするのはもうやめよう。 以前のように潤沢(でも無かったが)に予算を使うことは出来ない時代が訪れている。デザインと施工の分離は当然で、これまでは禁断の手法だったが、店舗デザインの一つの方向性が見えてきた。 ▼012-11-06 11:14 個展オープニングとWine caf? 夏目のお披露目 サンセリテでの個展が、3日に始まった。益子町の石蔵での展示は、まずその会場のすごさに驚かされ、その荒々しさとの対比で作品と対面することになり、会場と作品のインスタレーションが問われたのだが、ギャラリーでは作品だけがそこに存在し、作品そのものが問われる。そして、ギャラリーはやはり見やすく、マチエールがよくわかる。 4時からのアーティストトークでは、やってしまった。プロジェクターとマックをつなげるコネクターを忘れてしまったのだ。しかたなしに映像なしで開始。途中でお客さんの機転でコネクターをお借りでき、ほっと一安心。 しかし、かってなもので、映像なしのほうが、しゃべるのは楽なことに気がついた。映像があるほうが聴衆には分かり易いし、話の切っ掛けにもなると、常々、映像を出来る限り増やそうとしてきたが、これからは、最小限にしよう。 トークを終え、残った方々と手作りで改装してきた Wine cafe夏目 へ、お披露目をかね、移動。 15日のオープンまでは封印してきた、看板にもその日だけはと、明かりが入った。素材は生け花の花器に使用した、錆びた鉄板。 左:巾4mの照明にワイングラス棚。 右:錆びた鉄のオイル缶照明。 素材は湯谷のアトリエの枝と和紙とやはり花器に使っていたもの。棚の下に見える椅子はリサイクルショップで一脚づつ購入、全て違う。塗料をはがし、マットを取り外し、木でパッチワークし座面を作成。テーブルも同様で4卓全て違う。 4人がけのテーブルが4卓だけのささやかなスペースだが、居心地の良い空間で、(自分で造ったのだから、当たり前か)気持ちの良い時間が流れ、会話も弾んだ。 話題は最近、必ず、豊橋市の停滞に行き着いてしまう。問題あることは、誰もが、認識しているのだが。人口38万人にしては、確実にこの街は寂しい。そして、残された時間は、この街にも、私にもそう多くない。