「日本画」純粋と越境 90年代の視点から


車を走らせ、とある露出した地層を目にする。その地層から時には垂直に、あるいは水平に20段。時には上下2段とあきるまで採集する。地層のどの部分を選択しようが、色彩が豊かであろうと、変化がみられなくともかまわない。通常の絵画の如く、前もって明確なイメージや、絵画として追求するものがある訳ではない。土の色彩や素材感に魅入られている訳でも無い。土を使っての仕事がここ数年続いているのは、おそらく、同じ土が無いという事実に由来している。同じ場所から採集したとしても、結果は必ず違う。その為、結果の予測は出来無い、結果が善かろうと悪しかろうと二度同じ行為を繰り返す意味も無い。判断を超える、直感による対応が常に求められる。それに正しく反応する事が可能ならば、絵画を志向せずとも、絵画に成りうる。しかし、私にとって絵画である事以上に重要なのは、初めての出合い由の、常に新鮮な気持ちが継続可能であるという一事である。

味岡伸太郎