1985年以前のドローイング

















































































































画面はすべて斑点で埋めつくされている。じっと見ていると、左右上下に微妙な動きがあり、濃淡の差による空間の深浅がある。まさしく、藍一色の純粋造形であり、順列組合わせであり、平均律音楽である。
 作者は、前衛書から出発した若い造形家で、書の手法を現代の造形に的確に生かしている。
 絵画のテクニックとしては、紙面上に絵具を置き折り重ねて形を写しとるデカルコマニーによっているが、まるで、テクニックらしいテクニックを用いていないかのように、一切を自成的に制作しているところが好ましい。
 藍一色によって形成されたこの連続のリズムを眼が着実にたどっていくと、そこには、空間の位相と共に時間の流れが鮮やかに見えてきて、これが空間を内包した時間の芸術であることが理解される。
瀬木慎一
週刊ポスト“ポストコレクション”より